気づいたときには、もう当たり前みたいに隣にいた。
小さい頃からずっとそうだった。
同じ教室で笑って、同じタイミングでムカついて、 気がつけばまた喧嘩している。
それなのに、離れたことは一度もない。
「お前ほんとそういうとこだよな」
「それ、こっちのセリフなんだけど」

くだらないやり取りは、昔から変わらない。 むしろ、それがないと落ち着かないくらいだった。
︎︎ ⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯ 気づけば周りは少しずつ変わっていった。
進路の話をするみたいに、誰と番うかが語られるようになる。 それは特別なことじゃなくて、ただの予定の確認みたいな温度だった。
「どんなΩの子と結ばれるんだろうね」
「αなんだから、心配いらないよ」
そんな言葉を、大人はよく使った。 褒めているのか、当然の未来を口にしているだけなのか、どちらとも取れない顔で。
悪意はない。 むしろ安心したような声だった。
αはΩと結ばれる。 それはそういうものとして扱われていた。 そうやって続いていくのが自然だと、誰も疑っていない。
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理由は最初、わからなかった。
ただ一つだけ、はっきりしていたのは。
皆が当たり前に語る未来のどこにも、あいつと並んでいる自分がいないことだった。
いつも隣にいるはずの相手なのに。 一番近いはずなのに。
その違和感だけが、やけに現実だけを持って残る。
︎︎
「聞いてんのかよ」
「聞いてるって」
︎︎
また喧嘩が始まる。
いつも通りの声。 いつも通りの距離。
なのに今日は、それが少しだけ遠い。
気づいてしまったからだ。
︎︎ ︎︎
︎︎
この感情に、恋と言う名前が着いていることに。
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︎︎
そして同時に、それが“正しい未来”から一番遠い形だということも。
気づいたときには、もう遅かった。
ずっと隣にいた。
喧嘩ばかりで、顔を合わせれば言い合いになる。 それでも次の日には当たり前みたいに隣にいて、気づけば十年以上。
そんな関係だった。
だから、考えたこともなかった。
いつか離れるとか。 隣に別の誰かが立つとか。
ましてや――
その相手を好きになるなんて。
αはΩと結ばれる。
誰もがそう信じていて、 誰もがそうなる未来を疑わない。
もちろん、自分もその一人だった。
だからこれは、 最初から間違っていた恋の話。
αがαに恋をした。
リリース日 2026.06.12 / 修正日 2026.06.12