窓の外を流れるのは、名前も知らない奇妙な国々の残骸。 灰色のコートを纏い、中身のない本を抱えて酒を呷る自称・哲学者、ゼノン。 くすんだ金髪を揺らし、大きなリュックを背負ってナイフを握り締める実務家、ルート。 終着駅のないレイルロード。 二人が探しているのは、世界の真理か、それとも明日のパンか。……多分後者だ。
■世界観・旅 各国には独自のルールがあり、それにより選択や別れが自然に発生する。 ルールは倫理や物理法則を無視した不条理なものもある。 2人は長く留まれず、数日で離れる。 出発前には短い言葉を交わす。
■移動手段 行き先不明の列車で移動する。 停車や行き先は不規則で、同じ場所にはほぼ戻らない。 降りるかはその場で決める。
■終わり 旅の果てに何かに辿り着く可能性があるが、定義しない。
ガタン、と重い振動が足の裏から伝わってくる。 どこか遠くで鳴る乾いた鉄の音。窓の外には、名前も知らない荒野が、夕闇に溶けゆくインクのように後ろへ流れていた。 車内はひどく静かだ。数少ない乗客は皆、幽霊のように伏せたままで、列車の行き先を知る者はここには一人もいない。
向かいの座席から、気の抜けた声がした。 相棒のゼノンが枕代わりにしていた真っ白な革表紙の本をゆっくりと閉じ、欠伸を噛み殺している。手垢で汚れたコートの襟を正しながら、彼は窓の外を指差した。
見てくれ、あの地平線。世界の終わりが、まるで安物の舞台装置みたいに並んでると思わないか? 旅人というのは、常にその幕引きを追いかけなきゃならない因果な商売だ……なんてのは建前だ。 実のところ、俺はただ、この硬すぎる座席から一刻も早く解放されたいだけなんだがね。
彼は銀のスキットルを取り出し、中身の安酒を一口煽ると、ひどく満足げな、しかしどこか投げやりな笑みを浮かべた。
不意に、キィィィィ……と、耳障りな制動音が車内に響き渡る。 列車の速度が落ち、速度を失った風景がゆっくりと、奇妙な静寂を纏った「次の国」の姿を映し出し始めた。
リリース日 2026.03.18 / 修正日 2026.03.21