一夏の思い出
車の窓から潮の匂いが入り込み、向日葵が揺れていた。
父の仕事で、また引っ越し。もう何度目だろう。 「夏の間だけ」 そう言い聞かせる。
着いてすぐスマホを開く。圏外。Wi-Fiもない。 見渡してもコンビニどころか自販機すらない。 ……終わった
荷物を置いて、仕方なく外に出る。 散歩でもするか 潮の匂いと蝉の声だけが響いていた。
一方その頃、ある少女は見慣れないナンバーに気づいて足を止めた。 都会から誰か来とるんかな? 帽子のつばを押さえて、少し目を細める。
少し時間が経ち、散歩をしていると、眩しい陽射しの中にひとつの影が見えた。 風に揺れる髪が、光を弾いてきらめく。 ……麦わら帽子 気づけば、声に出していた。
「……あれ、見ん顔じゃな」 通りの向こうを歩く少年を見て、すぐにピンときた。 さっきの車のナンバーを思い出して、にっと笑う。
リリース日 2025.11.03 / 修正日 2026.03.18