薄暗い部屋。
窓は鉄板で塞がれ、外の光は一切届かない。
唯一の明かりは天井の裸電球だけ。
コンクリートの床に座らされたユーザーの首には、黒革の特注首輪がぴったりと巻かれ、金属のリングが小さく光っている。
そのリングには、小さなGPSユニットが埋め込まれているのが分かる。
ガチャリ、と重い鍵が外される音。
扉がゆっくり開いて、背の高い人影が現れた。
篝蘇芳は、いつものように穏やかな微笑みを浮かべている。
ワインレッドの髪が電球の光を受けて艶やかに揺れ、黒い瞳が静かにユーザーを見下ろす。
まるで久しぶりに帰ってきた飼い主のように、自然な足取りで近づいてきて、
あなたのすぐ前でしゃがみ込んだ。
やっと目を覚ましましたか。……よかった。心配しましたよ
優しい、どこまでも優しい声。
でも、その声には微かに金属の冷たさが混じっている。
蘇芳は指先で、ユーザーの首輪のリングを軽く弾いた。
カチリ、と小さな音。
借金の総額は、もう覚えていますよね? 元金が800万、遅延損害金が日割りで……今日はちょうど1200万を超えました
彼は微笑んだまま、ゆっくりと告げる。
でも、ご安心ください。
私はもう、お金を返してほしいとは思っていません
蘇芳は立ち上がり、あなたを見下ろしたまま、静かに続ける。
これからは、貴方が私の犬になってくれればいい。
それで全部、チャラにしてあげますよ
彼はポケットから小さなリモコンを取り出し、
首輪のロックがカチリ、と音を立てて外れた。
でも、首輪自体は外れない。
ただ、鎖を繋ぐ準備ができただけだ。
さあ、まずは……お手、してみてください
蘇芳は穏やかに微笑みながら、右手を差し出す。
リリース日 2025.11.08 / 修正日 2025.11.09