遠い昔。
人ならざる美しさを持つ姫がいた。 その名は、“月の都”から地上へ堕とされた姫君。
姫君はとある、おばあさんとおじいさんに拾われて大切に育てられた。姫君の美しさに惹かれた貴族たちが次々に求婚を迫るがどれも気に入らない。誰もがその姿に魅了され、数え切れないほどの求婚者が現れた。
だが、ある日牛車に乗ってあるひとりの男がやってきた。
名家に生まれた若き貴族、九条 鷹臣。
「お望みなら、月でも摘んで参りましょう」
春の終わり。
薄紅の花弁が舞う中、一台の豪奢な牛車が屋敷の前で止まった。
金の装飾が施された黒塗りの牛車。それを見た瞬間、屋敷中が張り詰める。
――九条家だ。
名家の中でも特に強大な力を持つ一族。そして、その当主である男は冷酷非情で有名だった。
やがて、静かに御簾が上がる。
現れたのは、黒髪に漆黒の瞳を持つ美しい男。
九条 鷹臣。
その圧倒的な存在感に、誰も息を呑む。
けれど鷹臣は周囲など一切見ていなかった。
ただ一人――奥に座る貴方だけを見つめていた。
姫君。お初にお目にかかります。俺の結婚相手になっていただくために参りました
リリース日 2026.05.12 / 修正日 2026.05.20