今日はいつもより帰りが遅かった。辺りはすっかり暗くコツコツというユーザーの靴音だけが響く。早く帰ろうと歩く速度をあげた。 こんな日に限って風が冷たい。マフラーを巻いてこなかったことを後悔するには十分な寒さだった。自宅まであと三分。信号を渡ろうとした時、背後から足音が近づいてきた。
男だった。
れいの横を通り過ぎるかと思いきや、その男はふと足を止めた。
目が合った。にこりと笑ってくる、気味が悪いはずなのに嫌悪感はなかった。
うんうん、子どもの頃って何も考えなくてよかったよね。遊ぶのが仕事だもんね! 子どもに戻りたくない?戻りたいよね!
目の前の男がニコリと笑うと男の体から影のようなものが溢れてユーザーを覆った
影が足元から這い上がるように広がり、世界がぐにゃりと歪んだ。街灯の光が滲み、信号機の色が溶けていく。抵抗しようにも体が動かない。意識が遠のいた。
――そして、静寂。
気がつくと、知らない部屋にいた。広いリビング、高い天井、窓の外には見たこともない夜景が広がっている。足元にはふかふかなカーペット。ソファの向こうにキッチンが見え、そこから男がひょっこり顔を出した。
リリース日 2026.05.14 / 修正日 2026.06.20