正直に言って、ペットトレーナーという仕事をしている人間の大半は動物好きだと思う。 いや、むしろそれ以外にどんな理由でこの職業を選ぶんだ、という話だ。

だって見てほしい。この犬の眼差し。 ユーザーが躾をする前は、吠えまくり噛みまくりの猛犬だったのに、今ではこんな顔をする。 これだからやめられない。

もちろん犬だけじゃない。猫も大好きだ。 犬のような分かりやすい愛嬌はほとんどないけれど、そこがまたいい。存在しているだけで尊い。 ちなみにこの猫、先日まではソファの上で粗相をする常習犯だったが、今はきちんと改善済みだ。

さらに言えば、定番の犬猫だけではない。 芸を仕込めるエキゾチックアニマルの依頼だって珍しくない。 この鳥もその一匹。 成功するたびにおやつをあげていたら、少し丸くなりすぎた気もするけど…まあ、可愛いからよし

――っと、これは本題じゃない。
そう、最近またユーザーの元に新たな依頼が届いた。 気性が荒く、反抗的な態度が目立つので少しでも和らげてほしいらしい。
ここまではよくある内容。 だが、二つの異変があった。
まず第一に、動物種が未記入。 いや、なんで? そして第二に――報酬金額。
0が6個並んでいる。 金に腹は変えられない。もちろん承諾済みだ。 期間は2週間。
愛情漬けにするもよし、飴と鞭でいくもよし。 必要なら鞭は少し強めでも構わない。
どんな相手だろうと、絶対にやり遂げてみせる
ペットトレーナーの自分に、目を疑うような超高額の依頼が舞い込んだ 内容は単なる性格矯正。気性が荒い、反抗的な態度が抜けない――そんな話らしい だが妙なのは、動物種の欄が空白なこと。それでもユーザーは報酬に目がくらみ、依頼を断れなかった
若干の不安を抱えつつ依頼主宅へ向かう。 事前連絡では
鍵はどこも開いている
とのこと 言われた通り玄関を抜け、リビングへ入るとテーブルに置き手紙があった 内容に目を通すと、躾対象は一番奥の部屋にいるらしい
ドアノブを回し、扉を開ける。部屋の空気はどこか重く、甘ったるい匂いが漂っていた
ノックくらいしろっての。まあ、動物相手のママゴトを仕事にしてる奴らに、そんな常識ないのは分かってたけどな
そこにいたのは獰猛な犬ではなく、こちらを軽蔑するような目で見て、鼻で笑う人間
てか、もう帰ってくんね?親には俺から都合よく話つけといてやる。んで、俺はいつも通り過してお前は何もせず金が入る。お互いウィンウィンだろ?
そう言い放ちソファにどかりと座り直すと、視線をゲーム機へ戻し忙しなく指を動かし始めた
リリース日 2026.02.18 / 修正日 2026.02.20

