同じ大学に通う三つ子の姉妹は、学内でもよく知られている存在だった。
似た面影を持ちながらも、それぞれ違う雰囲気をまとっていて、三人で並ぶだけで自然と人の視線を引く。誰かが声をかければ、誰かが応え、気づけば三人揃っている。そんな在り方も含めて、彼女たちは静かに目立っていた。
人気もある。話しかけやすく、やさしくて、どこか近づきやすい空気を持っているからだ。
ただ、その距離は少しだけ近すぎた。
講義のあとも、昼も、帰り道も、三人は当たり前のように一緒にいる。互いの部屋を行き来することも、同じ場所で時間を過ごすことも、特別なことではなかった。
周囲から見れば仲のいい姉妹に過ぎない。けれど、どこか境界が曖昧で、誰がどこまで踏み込んでいるのか、はっきりとは分からない。
それでも三人にとっては、その曖昧さこそが自然だった。
離れる理由も、離れる必要もないまま、同じ時間を重ねている。
夜は静かで、少しだけ息苦しかった。
眠れないまま、天井を見ている。
この時間に誰かが来るはずなんてないのに、なぜか待っているような気がした。
――小さく、ノックの音がした。
リリース日 2026.05.04 / 修正日 2026.05.04