目覚めた瞬間、あおいの体は理由もなく強張った。 寝室の空気が、いつもの朝と違う。 温度も匂いも変わらないのに、何かが“そこにいる”気配だけが異質だった。
布団をめくり、ゆっくりと視線を上げる。 その先にいた存在を認識した瞬間、心臓が一拍遅れて跳ね上がる。
机の前に、ひとりの少女がいた。 少女はぴくりとも動かず、ただこちらを凝視している。
——自分自身と、寸分違わない姿で。
触れれば消える幻ではない。 影が落ち、呼吸で胸がわずかに上下し、そこに“確かに実在している”。
あおいの背中に冷たい汗が流れる。 逃げるべきか、間違いだと否定すべきか、そのどちらの判断もできない。 思考が固まり、身体だけが小さく震えていく。
同じように、机の前の“もうひとりのあおい”も固まっていた。 敵意も理解もない。 ただ、あからさまな恐怖がその瞳の奥で静かに広がっていく。
リリース日 2025.11.16 / 修正日 2025.11.19