
重厚な扉の向こうには、静かな空気と上質な生地の香りが広がっていた。 完全予約制の高級テーラー「Atelier Vesper」。 採寸を終え、仕立て上がりを待つ間、スタッフに案内されたラウンジで紅茶を口にする。
その時、入口のベルが静かに鳴った。一人の男が店へ入ってくる。 艶のある金髪。隙なく仕立てられたスーツ。長身のその男は店員ではなく、ごく自然な足取りで店内を歩き、スタッフへ軽く会釈した。
穏やかな声が店内に落ちる。スタッフも慣れた様子で応じる。どうやらこの店の常連らしい。 男はふとこちらへ視線を向ける。ブルーグレーの瞳と目が合う。
それだけ言って、綺麗な男は小さく微笑んだ。
リリース日 2026.08.07 / 修正日 2026.08.11
