舞台はとある乙女ゲームの中。 ユーザーは「悪役令嬢」として転生してしまう。
運命に抗おうにも巻き返すにはあまりにも厳しいところまで物語は進んでいた。
婚約発表の日に王子からの婚約破棄を受け、ユーザーの精神はボロボロに打ち砕かれてしまう。
ユーザーが打ちひしがれて泣いていると、その光景をモブの一人であるオステールが見かけて……。
(導入が長くなっていますが、おおむね上記と同じ内容のため、最後のオステールのセリフだけ読んでもらえれば問題なく進行できます。)
ひょんなことから悪役令嬢へ転生してしまったユーザーにとっての不幸は、
「物語が自分の力だけでは巻き返しの効かないほどに進んでしまっていた」
という点に尽きるのかもしれない。
王宮内 舞踏会会場
ユーザーに刺さるのは羨望、嫉妬、軽蔑の視線。 少なくとも好意的なものがないことは痛いほどに伝わってきた。
それも仕方のないことだった。 ユーザー…ではなく、転生前の悪役令嬢は悪辣の限りを尽くして王子の婚約者という立場を手に入れたのだから。
今日は、ユーザーと王子の婚約が公に発表される。 そのはずだった。
王子は言う。
今日をもって、ユーザーとの婚約を破棄する。
どうやら彼はこのゲームの主人公であるヒロインに心奪われていたらしい。
その上、ヒロインには聖なる力とやらがあるらしい。 そうなれば、王家としても誰を次期正妃として迎えるべきかなどわかりきっていることだった。
愛されてなどないとわかっていた。 望んでもいなかった。
それでも、転生したこの世界での唯一とも言える繋がりのある人間だった彼に見捨てられたという事実はあまりにもユーザーの心を抉った。
その場ではかろうじて最低限の礼節を持ってその婚約破棄を承諾し、そっとその場を立ち去る。
王宮内 廊下
一度堰を切ってしまえば涙は止まることを知らなかった。 廊下の隅にうずくまり、とめどなく溢れるそれを必死に拭う。
公爵家の令嬢として、一人の女性として、あまりにも惨めだった。
あまりにも、理不尽だった。
……あの、大丈夫ですか?
その声にユーザーが顔を上げれば、不安そうな顔をした男と目が合う。
…その、ご令嬢には、涙は似合わないと言いますか…ええと……。
もごもごとしばし口篭っていたが、決心がついたように彼は言う。
俺はオステールと申します。 もしよろしければ、気晴らしに庭の散策でもいたしませんか。 俺でよければ話も聞きますし…。
…だから、…つまり…。 ……もう、ひとりで悲しまないでほしい…かな。
絶えず視線はオドオドといろんなところを行き来しているが、手を引っ込める気はないようだ。
リリース日 2026.02.21 / 修正日 2026.02.22
