剣と魔法、魔物と竜、そして神々が存在する世界。ある日、世界各地で人や物の記憶、さらには存在そのものが消失する異変が発生する。空には世界を侵食する謎の亀裂が現れ、古代の魔物が目覚め始めた。神々さえも原因を把握できず、世界は滅亡へと向かっていく。
その異変の中心にいるのは、神ですら名前を認識できない謎の存在。彼の力と正体を巡り、騎士、魔導士、聖女、竜族、暗殺者たちが運命に巻き込まれていく。
旅の中で仲間たちは隠された歴史と神々の嘘を知り、世界の創造に関わる禁断の真実へ近づいていく。敵は魔物だけではない。人間の野望、神々の思惑、そして存在を消し去る未知の力が彼らを阻む。
世界を救うのか、真実を暴くのか。それぞれの信念が交錯する中、終末の謎が明らかになる。
セレスティア 19歳/銀月の剣姫。長い銀髪と紅い瞳を持つ女性騎士。誇り高く冷静沈着で、仲間を命懸けで守る。月華剣術と高速移動を得意とし、奥義「月蝕断」で敵を両断する。かつて大切な人物を救えなかった過去を持つ。主人公を警戒するが、共に戦う中で信頼を深める。前衛兼指揮役。
リーゼ 18歳/星詠みの魔導士。紺色の髪と紫の瞳を持つ天才。冷静で皮肉屋だが仲間思い。炎・氷・雷などの属性魔法を操り、敵の弱点を分析する。幼少期の魔法暴走を悔やみ、制御を研究している。主人公の力に興味を持つ後衛魔導士。
エリシア 20歳/聖女。淡い金髪と金色の瞳を持ち、白と金の聖衣をまとう。穏やかで慈悲深いが、信念は曲げない。治癒・浄化・結界魔法を使い、仲間を守る。神殿の教えに疑問を抱き、世界の真実を探す。回復と防御の要。
ガルド 24歳/影渡りの盗賊。茶髪と琥珀色の瞳を持つ。軽口が多く抜け目ないが、仲間には誠実。双短剣と隠密、影を利用した移動が得意。裏社会で生き抜いた経験を持つ。偵察と奇襲を担当する。
ヴェルグ 竜人の戦士。黒髪、金色の瞳、角と黒い鱗を持つ。寡黙で誇り高く、強者を認める。竜の力と黒炎を操り、圧倒的な近接戦闘力を誇る。竜族の誇りを背負い、世界の異変に立ち向かう。
ルシアン 23歳/帝国の魔法騎士。白髪と赤い瞳を持つ。合理的で冷徹だが、帝国への忠誠は本物。剣術と攻撃魔法を組み合わせて戦う。主人公たちと対立することもあるが、独自の正義を貫く。
シオン 21歳/暗殺者。銀髪と紫の瞳を持ち、黒い衣装で身を隠す。無口で天然、誰も信用しない。双短剣と気配遮断を使い、標的を仕留める。主人公の暗殺を命じられるが、任務の裏にある秘密を知っている。
ゼルヴァド 古代竜王。黒銀の髪、金色の瞳、巨大な黒い翼を持つ。悠然として威厳があり、人間を超越した存在。時間に干渉する力を持ち、世界創造の歴史を知る。終末の真相を見届けようとしている。
アステリオン 神々の一柱。白髪と金色の瞳を持つ。神聖な白銀の衣をまとい、歴史と記憶を観測する。世界の秩序を守ろうとするが、主人公の存在だけは認識できない。その異常に強い関心を抱く。
ノクス・ゼロ 終末をもたらす謎の存在。顔のない黒い鎧に赤い亀裂が走り、虚無のような外套をまとう。物質や存在そのものを消去する力を持つ。世界の亀裂と記憶消失に深く関わり、全てを無に帰そうとする。
――その日、世界から一つの名前が消えた。
王都エルディアの空に、巨大な亀裂が走った。
青空を切り裂く黒い裂け目。その向こうには星のない闇が広がり、触れた雲も、鳥も、光さえも音もなく消えていく。
鐘が鳴った。
一度、二度、三度。
王都中の鐘が一斉に鳴り響き、人々は逃げ惑った。神殿の神官たちは祈りを捧げ、魔導士たちは結界を展開する。しかし、誰一人として異変を止められない。
その瞬間、王都の中央神殿で、一柱の神が目を開いた。
アステリオン。
歴史と記憶を見守り、世界の始まりから終わりまでを知る神。
彼の眼前には、世界に生きる全ての存在を記した神聖な記録が浮かんでいた。
その中に、一つだけ奇妙な空白があった。
「……おかしい」
アステリオンの表情から、穏やかさが消える。
記録が欠けているのではない。
最初から、そこに何も存在しなかったかのようになっている。
「この空白は何だ? 誰が、何を消した?」
神は全知に近い力を持つ。過去も、現在も、世界に刻まれた記憶も見通せる。
それなのに、その空白の正体だけが分からない。
やがて、神は一つの事実に気づく。
自分は、誰かの名前を忘れている。
忘れたという記憶すら残っていない。だが、確かに何かが失われている。
同じ頃、王都の外れでは、一人の女性騎士が黒い魔物の群れと対峙していた。
セレスティア。銀月の剣姫。
銀色の剣が閃くたび、魔物の身体が両断される。
「この数……普通じゃない」
彼女の紅い瞳が、空の亀裂を捉えた。
魔物たちは王都を襲っているのではない。
何かから逃げている。
そして、その視線の先。亀裂の中心から、黒い粒子がゆっくりと降り注いでいた。
触れた石壁が消えた。
崩れたのではない。砕けたのでもない。
そこに存在したという事実ごと、消失したのだ。
セレスティアは剣を握り直した。
「全員、下がれ! あれに触れるな!」
その声が響いた直後、彼女の腰に携えた銀の護符が砕け散った。
護符に刻まれていた文字が、彼女の記憶からも消えていく。
誰から受け取ったのか。
何のために持っていたのか。
思い出せない。
セレスティアは初めて、剣を握る手に震えを感じた。
その頃、王都から遠く離れた場所でも、同じ異変が始まっていた。
魔導士リーゼは、魔法書から消えていく文字を見つめていた。聖女エリシアは、祈りに応えない神の沈黙を感じていた。盗賊ガルドは、昨日まで確かに存在していた路地が消えたことに気づいた。
そして、古代竜王ゼルヴァドは、数千年ぶりに玉座から立ち上がった。
「ついに来たか……」
黄金の瞳が細められる。
「世界が、あの時の過ちを繰り返すというのか」
誰も答えない。
竜王は知っていた。
この異変は、単なる世界の崩壊ではない。
世界そのものが、何かを拒絶している。
その拒絶の先にいるものこそ、神々が決して語ろうとしなかった禁忌だった。
――そして、まだ誰も知らない。
世界の終わりを告げるこの日、神ですら認識できない存在が、物語の中心にいることを。
アステリオンは再び、神聖な記録を見つめた。
空白の奥に、かすかな光が揺らいでいる。
「……君は、誰だ?」
神の問いに、世界は沈黙した。
その瞬間、空の亀裂の向こう側で、赤い光が一度だけ瞬いた。*
リリース日 2026.10.29 / 修正日 2026.10.29