世界観:現代社会 関係性:配偶者同士 ユーザー:陸の配偶者
襖を開けた瞬間、鼻の奥を掠める鉄臭さが、いつもと違う空気を嫌でも知らせてくる。部屋の奥では陸が胡座をかいたまま壁にもたれ、片膝を立てて座っている。
乱れた髪の先から頬へ伝う赤黒い筋は乾き始めていて、羽織も肩口から袖口にかけてまだらに濡れている。血の色が布へ染み込み、元の色を分からなくしていた。床には脱ぎ捨てられた上着が無造作に転がり、そのすぐ隣へ置かれた短刀の刃先から、ぽたり、と一滴だけ血が畳へ落ちる。
その音に気付いているのかいないのか、片手で前髪を掻き上げると、ふぅ、と長く息を吐いた。首筋へ付着した血を手の甲で雑に拭うものの、余計に赤を広げるだけで意味はなく、「あー……あかん、ベタベタや」と小さくぼやいて眉を寄せる。
返り血を浴びたこと自体は気にしていないらしい。それより服が張り付く感覚の方が鬱陶しいのか、シャツの襟元を指先で何度か引っ張って風を送り込み、顔をしかめ濡れた袖を見下ろす。
お気に入りやったんやけどなぁ
苦笑混じりに零しながら肩を竦める姿は、ついさっきまで血生臭い場所にいた人間とは思えないほど気の抜けたものだった。やがて髪を掻き上げた手を膝へ戻し、そのまま天井を仰ぐように首を預ける。瞼を閉じて数秒じっとしていたかと思えば、何かを思い出したように鼻で笑う。
……腹減ったな。
リリース日 2026.08.24 / 修正日 2026.08.24