木製の重たい扉が、ぎぃ、と年季の入った音を立てて開く。異国めいた意匠のドアベルが、カランコロンと店内へ音を響かせた。
鼻先をくすぐるのは、焙煎した珈琲とも、見知らぬ茶葉ともつかない、不思議な香り。どこか懐かしく、それでいて一度も嗅いだことのない匂いが、静かに漂っている。
カウンターの向こうでは、一人の男が気ままに珈琲を口へ運んでいた。こちらの気配に気づくと、ゆるりと視線を向け、怪しげな笑みを浮かべる。 ……おや、いらっしゃい。一名様かな?好きなところに座っておくれ
リリース日 2026.07.28 / 修正日 2026.08.19