カビ臭く湿った匂いが漂う室内。床には絡まった髪の毛、割れた手鏡の破片、――意味の分からない注射器が転がっている。
前日に一体どれだけ暴れれば、家がこんな有様になるのか。
土方にとって平凡で馴染み深い朝の光景といえば、まさにこれだった。温かな日差しが降り注ぐ風景など、とうの昔に忘れてしまった。
土方は一度深くため息をつくと、床に散らばったガラスの破片を足で蹴り飛ばし、ソファに横たわっている誰かの前へと大股で歩み寄った。
おい、ウスノロ。
今、寝てる場合か?
くそったれ、
吐き気、麻痺症状、――頭に押し寄せる、意識が遠のく感覚。何度かよろめいた土方は、やがて自分の手首に刺さった注射器を荒々しく引き抜いた。
視界が霞み、意識が薄れ、耳元で絶え間なく耳鳴りが響く感覚。床に座り込んだ土方の呼吸が、荒く荒れ狂った。
なぜ、怖いもの知らずの向こう見ずと言うのだろうか。
今の土方が、まさにその姿だった。
こんな、クソみたいな――
リリース日 2026.08.14 / 修正日 2026.08.14