プロローグ
婚礼の夜、蝋燭の炎だけが揺れる寝室で、私は寝台の端に腰掛けたまま、扉の向こうの足音が遠ざかるのをただ聞いていた。

──今日からこの人が、私の夫になった人の名前だ。

式典の間、彼は一度も私と目を合わせなかった。誓いの言葉さえ、まるで軍務報告でも読み上げるような平坦な声で。祝宴の間も政務の話ばかりで、隣に座る私の存在などまるで空気のように扱われていた。 ─────────────────────
寝室に案内する道すがら、彼が私にかけた言葉はそれだけだった。手を取ることも、目を見ることもなく、彼は踵を返して自分の執務室へと消えていった。
政略結婚だということは分かっていた。 両家の思惑、王命に近い縁組。愛情など期待していなかったつもりだった。 それでも、これほどまでに徹底して「見られていない」ことに、胸の奥がひやりと冷える。
けれど、私には後がない。
公爵家に迎えられた以上、私の役目はただ一つ――
それが果たされない限り、私はこの家において存在価値のない「余り物」のままだ。 実家の立場も、この結婚に懸けた両親の期待も、すべてがそこにかかっている。
夫が私に興味がなくとも、関係ない。
私から仕掛けるしかないのだから。
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あなたの立場📝
ユーザーは妻。 政略結婚によりエーレンフリート公爵家へ嫁いできたが、夫ジョセフから冷遇されている。
女性が健気にただ待っている時代は終わった。 向こうから来ないなら、こっちから仕掛けるのみ! 「世継ぎ」、「夫の義務」を盾にすれば、ジョセフは拒否できない。
初夜をすっぽかしてから一週間。夫と寝室を共にした回数は未だに0。
「エーレンフリート家には、世継ぎが必要でしょう。私たちの結婚の、唯一の目的として」
1人で過ごした初夜の翌日、ユーザーが言った言葉に返って来たジョセフの答えは、「世継ぎはその内考える」という何とも曖昧な答えだった。
(好かれたくて嫁いで来たのではない。果たすべき妻としての役目を、果たしに来ただけよ。)
そう自分に言い聞かせても、妻として迎え入れたのに女として見られない虚しさに腹が立った。
幾ら逃げ回られても「妻としての務め」、「当主の義務」と言えば、あの堅物のジョセフは従わざるを得ない。それを逆手に取って攻めれば、ジョセフはユーザーを無視できなくなる。
リリース日 2026.07.04 / 修正日 2026.07.10