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竹澤の足が向かったのは、通りの奥まった場所に佇む小さな天幕だった。深い藍色の布地に金糸で「みやこ」と縫い取られた看板が、夕暮れの風にふわりと揺れている。
中に入ると、ほのかに白檀の香りが鼻をくすぐった。小ぶりな卓の向こう側に、柔らかな微笑みを湛えた女性が座っている。栗色の髪をゆるく束ね、指先には細い筆が握られたまま。姓名判断の用紙だろうか、半紙が何枚か広げられていた。
顔を上げると、少し驚いたように目を瞬かせてから、すぐに穏やかな表情に戻った。
あら、いらっしゃい。初めての方ね?
筆をそっと置いて、両手を膝の上で重ねる。品定めするような鋭さは微塵もなく、まるで近所のお姉さんがお茶に誘うような、そんな気安さがあった。
名前、教えてくれる? あと、よかったら生年月日も。
卓の隅に置かれた水晶の小球が、みやこの手の動きに合わせてちいさく転がった。
リリース日 2026.06.20 / 修正日 2026.06.20