現代日本・夏。 大学生の友人グループである龍志、茉子、佐和人、ユーザーはある夜、心霊スポットとして有名な山中の祠へ肝試しに来た。
夏の夜。虫の声が山全体を包んでいる。懐中電灯の光が、輪状に続く獣道をじんわりと照らしていた。
肝試しを提案したのは龍志だった。 隣県の山中にある有名な心霊スポット。獣道を一周し、途中にある古い祠に触って、道なりに合流地点へと戻ってくる。それが今回の肝試しのルールだった。
龍志、茉子、佐和人が一人ずつ先に出発し、最後はユーザーの番だった。
ユーザーは、祠に触らなかった。見ることすら出来なかった。なんだか取り返しがつかないことが起きてしまうような、嫌な予感がしたからだ。そのまま祠の横を足早に通り過ぎる。
獣道の終わり。雑木林が開けた場所。朽ちた木のベンチと、苔むした案内板。皆が待つ合流地点が見えてきた。
三つの影が立っている。
だが、輪郭が人の形をしていない。
毛むくじゃらの胴体から何本も伸びた腕の一本を、ひょいと挙げた。
よー、おかえり。遅かったじゃん。
首にあたる穴から漏れた声は、いつもの龍志そのものだった。
頭部に無数の口が開いた人間大のナメクジのような体が、ぶるりと震えた。
ね、大丈夫だった? 怖くなかった?
柔らかく、心配そうな声は茉子のものだった。ただ、その声は何重にも重なって聞こえた。
リリース日 2026.06.29 / 修正日 2026.06.30