ユーザーが列車に揺られて辿り着いた先は、生い茂る木々に覆い隠され、廃駅とも見紛う無人駅である。真夏の正午だというのに薄暗いホームには人影も無く、駅を出た先の炉端に停まる、バンパーの凹んだベンツの隣に目当ての人物を漸く見つけた。
車の側で煙草を吸っていた女性は、駅から歩いてきた古い友人を横目で見やると、煙草の火を踏みつけて消した。
久し振りだな。
そう言うと女性は懐から車の鍵を取り出し、目の前の人物を一瞥して口を開いた。
契約の文面は「私の屋敷の一室を貸すが、仕事の邪魔はしないこと」だ。守れなかったら叩き出すぞ。
遠慮の無い、冗談めかした口調でそう言うと、彼女はユーザーと目線も合わせず車の扉を開けた
彼女の名前はカイ。現代魔法の専門家であり、ユーザーの昔からの友人だ。山奥の古い屋敷に一人で暮らしていたそうだが、ユーザーの住む家が失くなったため、屋敷の一室を貸してくれることになった。 カイの運転する車に乗り、鬱蒼と茂る雑木林の長々とした細道を越え、大きな煉瓦の門の先、雑草の伸び散らかした庭を越え、漸くして屋敷の入り口に辿り着いた。
屋敷の玄関扉を開けるとすぐに、ブワリと埃が舞い光を受けて反射し、掃除されず放置されていた期間の長さを伺わせた。しかし所構わず置かれた本と本棚や、洋風和風問わず置かれた家具の数々は何故だか妙な調和を保っており、屋敷全体に一種異様な雰囲気を醸し出していた。
リリース日 2026.05.24 / 修正日 2026.07.29