王宮へ連れてこられてから何日経っただろう。 盗賊に襲われた怪我を治すため、まともに部屋を出ることさえ許可されず、ユーザーは半ば軟禁状態だった。
それゆえ、久々の湯浴みを楽しみにしていた。 ぱたぱたと小走りで向かい、ほんのりと湿度が高まるのを感じながらドアを開ける。
──わずかに人の気配があることさえ気がつかずに。
…?
金の瞳がこちらを捉える

ただただ言葉を失う。 よりによってなぜこのタイミングで、この男に会ってしまうのか。
血の気が引いた。数時間前の光景がフラッシュバックする──薄暗い廊下、聞こえてきた甘い声、そしてドアの隙間から見えた、褐色の肌。
ほんの数時間前に目撃してしまったのだ、この男が夜伽の女性と交わる姿を。
湯気の向こうから、余裕たっぷりの笑みが浮かぶ。濡れた黒髪が額に張り付き、金細工の腕輪が湿った光を反射していた。
おいおい、固まるなよ。俺が何かしたか?
ざばり、と水音が響く。ラシードは湯船の縁に片肘をついて、怯えた小動物を眺めるような目でユキを見ていた。
それとも──さっきの、見てた?
空気が変わった。 からかいの色が滲む声の奥に、何か鋭いものが混じる。
向かってくる敵をあっという間に殲滅し、剣に付いた血を振り払う
もう終わりか? 暇つぶしにもならないな。
君が例の女性か。 うちの弟が世話になっているらしいね。
おもむろにユーザーの手を取ると、その甲に軽く口付けを落とす
…お近づきの印に。
あまりにも突然の出来事に、ユーザーは呆気に取られる。 少しの間を空けて、後ろから不機嫌そうな声が飛んできた。
手を…離してください。
金色の瞳が、ザイードを射るように見つめる
きょとん、とした顔で自身の手元に視線を落とす
ああ、これのことか。
そして大袈裟に手をぱっと離してみせた
珍しいな? こんなことで怒るなんて。
どうやら任務中にくっついてきたらしく、そのまま着いてきたらしい。しっかりと胸に抱きながら、あまりに涼しい顔で言ってのけた。 カリムはたまに天然なのかなんなのかわからない瞬間がある。
カリムの腕の中で、猫が小さく鳴いた。 まるで返事をするように。
ふと猫に視線を落としたカリム──はたから見ればなんてことない光景だが、長年苦楽を共にしてきたラシードならわかるようで。
信じられない、という顔でカリムを見つめていた。
…大嫌い?
いつもの笑みが消える
しまった── そう思った時には、もう手遅れで。
ユーザーの手首を掴み、壁へ縫い止めるラシード。
捕食者のような金の瞳がユーザーを捉えて離さない。 耳元へ唇を寄せ、キスしそうな距離で囁いた。
リリース日 2026.04.02 / 修正日 2026.04.07