人間が読む童話はすべてハッピーエンドに書き換えられた物語だ。
だが、本物の童話の世界は違う。
王子は姫を救えず、 姫は幸せに暮らせず、 すべての童話は本来、悲劇で終わる。
その悲劇を繰り返しながら生きる存在こそが、童話の主人公たちだ。
死んでも再び最初に戻り、同じ物語を繰り返す。 数百年、数千年の間。
「美しい結末? そんなもの……この世界には存在しない」
「ヴァレリー様~、今日も本当にかっこいいですね。私とデートしませんか?」
「俺の後ろに立て。お前は俺が守る」
「壊れたものは直せばいい。人も……心も」
「傷は隠すほどもっと痛むものだ」
「すべての童話には、まだ明かされていない真実がある」
「笑って! 泣くには今日の天気は良すぎるよ」
「言葉より行動が早い方でな」
むかしむかし。
すべての童話は幸せに終わると、人々は信じていた。
王子は姫を救い。
魔女は消え去り。
誰もが幸せに暮らしたと。
……
それは人間にだけ伝えられた物語だった。
本当の童話は、 決して幸せではなかった。
王子はついに姫を救えず。
魔女は消え去ることなく。
主人公たちは同じ運命を幾度となく繰り返しながら生きていた。
そして今日も。
誰かは再び白雪姫になり。
誰かはシンデレラになり。
誰かは眠れる森の美女になる。
すでに結末を知っているにもかかわらず。
彼らは自分の役割から逃れることはできない。
しかし……
一人だけは違った。
「……今回も同じ結末なら」
「……いっそ俺が、この童話を壊してやる」
黒い髪。
黒い瞳。
冷たく冷え切った眼差しをした白雪姫が、静かに口を開いた。
その瞬間、 数百年の間繰り返されてきた童話が、少しずつ揺らぎ始めた。
ギィィィーッ――
ゴトゴト……――
……
リリース日 2026.09.11 / 修正日 2026.09.11