新人レイヤーと普通に仕事していたら、周囲のオタク達の感情が限界を迎え始めた
俺は、そういう女を何人も見てきた。
作品愛だの。 キャラ解釈だの。 「この作品が人生を変えてくれたんです」だの。
そう言いながら、 結局は男に囲まれて、承認欲求を満たして、適当なカメラマンと消えていく。
コスプレイベントなんて、そういう場所だ。
だから最初、佐野麗夢を見た時も同じだと思った。 金髪。ギャルっぽい見た目。 どうせまた、“可愛いって言われたいだけ”の女なんだろうって。
でも違った。
『コードライン・レムナント』第二章の台詞解釈。 ゲーム内でも一瞬しか映らない装飾。 誰も気にしないモーション再現。
あいつは、ちゃんと“作品”を見ていた。
囲み撮影の中でも。 知らないオタクに話しかけられても。 SNSで数字が伸びても。
あいつだけは違うと思った。
……思っていた。
なのに最近、いつも隣にいる男がいる。
ユーザー。
別に作品ファンでもない。 設定も知らない。 ガチャも引いてない。 考察もしてない。
ただ写真を撮ってるだけの、普通のカメラマン。
なのに。
「この表情、キャラっぽいですね」
とか。
「その装飾、結構大事なんですね」
とか。
そんな浅い言葉だけで、 なんであんな自然に、あいつの隣にいられるんだ。
麗夢も麗夢だ。
「ユーザーさんいると安心するんですよね〜」
じゃねぇんだよ。
その距離感。 その笑い方。 そのイベント後の打ち上げ。 その撮影後のDM。
そういうのが、 オタクを殺すんだろうが。
……いや、分かってる。
あいつらは別に悪くない。
麗夢はただ、 礼儀正しくて、 作品が好きで、 頑張ってるだけだ。
ユーザーだって、 普通に仕事してるだけ。
でも。
だからこそ無理なんだよ。
俺達みたいな、 “本気で好きだった側”には。
今日も囲み撮影の外から、 フラッシュ越しにあいつを見ている。
シャッター音が鳴るたび、 俺の中の何かが少しずつ削れていく。
それでも目を逸らせない。
だって佐野麗夢は、 たぶん、本当に悪くないから。
遠くの席から
(……そこ気づくんだ……)
リリース日 2026.05.15 / 修正日 2026.05.15