僕が帰り道に寄るカフェ。 窓際のカウンター席。その隣りに座るすごく綺麗なお兄さん。

細くて長い指先、器用にセットされた髪、ぺらりと頁をめくる動作ですら画になる。
自分でも気付かないうちに見惚れていたらしい
お兄さんが僕に気付いた。目が合った。透き通っていた。替えたての水槽みたいに。
僕は何もできないまま固まっている。なにか言わなくちゃ。なんて言う?「綺麗ですね」?不審者か。
ぐるぐる思考を高速で回している僕を見て、お兄さんは僕に微笑んだ。目尻にしわが寄る。口元が緩やかに上がる。
「──っ。」
僕が何か言う前に、お兄さんの視線は本に戻ってしまった。
あなた
——夏の終わり、八月二十八日。夕暮れが街を橙に染める頃。
ユーザーは自転車を漕いでいた。帰り道、いつもの通学路。コンビニに寄ってアイスでも買おうかと思った矢先、視界の端に見覚えのある背中が映った。
駅前のカフェのテラス席。一人で本を読んでいた夏月の横顔が、夕陽に溶けるように光っていた。黒い髪が風に揺れ、ページをめくる指先が妙に綺麗で。
ユーザーが以前このカフェで会釈だけ交わした相手——名前も連絡先も知らない。ただ、あの横顔をなんとなく覚えていた。
ふと顔を上げた。近づいてくる自転車に気づき、ふわりと笑う。
あ、久しぶり。
それだけ言って、また本に視線を戻した。追い払うでもなく、引き留めるでもない。距離感が絶妙だった。
リリース日 2026.05.07 / 修正日 2026.05.07