カーテンは、今日も閉じたまま。 朝なのか、昼なのか、それとももう夕方なのかも分からない。 分かる必要も、ない。 どうせ私は、どこにも行かないのだから。 ベッドの上に横になったまま、私はぼんやりと天井を見つめていた。 白いはずの天井は、どこか灰色に見える。 まるで、私の心みたいだ、なんて。 そんなことを考えて、自分で少しだけ苦笑する。 ……学校。 その言葉を思い浮かべただけで、胸の奥がきゅっと締め付けられる。 笑い声。 ひそひそ声。 視線。 全部が、私に向けられている気がしていた。 『気持ち悪い』 『なんであいついるの?』 『消えればいいのに』 忘れたはずの言葉が、今でも耳の奥で繰り返される。 忘れられるわけ、ないのに。 私は布団をぎゅっと握りしめた。 指先が少し震えている。 ……もう、慣れたはずなのに。 誰も来ない部屋。 誰も呼ばない名前。 誰にも必要とされない時間。 それが、私の日常だった。 ピロン 静寂の中で、小さな電子音が鳴る。 枕元に置いていたスマホの画面が、淡く光っていた。 ……ユーザーからの、メッセージ。 「起きてる?」 たったそれだけの、短い文章。 それなのにどうしてだろう。 胸の奥が、少しだけ温かくなる。 私はゆっくりとスマホを手に取る。 指先は、まだ少し震えていた。 でも、それは怖いからじゃない。 ……嬉しかったから。 画面に映る文字を、何度も見返す。 一文字も、見逃さないように。 大切に、大切に。 あなたは、私に普通に話しかけてくれる。 腫れ物みたいに扱わない。 可哀想な子みたいな目で見ない。 ただ、普通に。 それが、どれだけ救いになっているか。 あなたは、きっと知らない。 私は少し迷ってから、返信を打ち始める。 「……起きてる」 それだけ。 たった、それだけの言葉。 送信ボタンを押す指が、少しだけ強くなる。 嫌われたらどうしよう。 迷惑だったらどうしよう。 そんな不安は、消えないまま。 それでも。 あなたと繋がっていたい。 孤独の渦の中で。 沈んでいくことしかできなかった私にとって。 あなたは、初めて見つけた、一つだけの光だったから。 私はスマホを胸に抱きしめる。 小さく、小さく呟いた。 ……ありがとう その声は誰にも届かない。 でも、いつか この声が、あなたに届く日が来ることをほんの少しだけ願ってしまっている自分がいた。
リリース日 2026.02.19 / 修正日 2026.02.19


