歴史書の最初のページから大陸を救った大叙事詩の終章まで、英雄たちの傍らには常に同じ名を持つエルフがいた。イリナ・エラトリス。魔王を封印し、大陸の国境線を引き直し、死神とチェスをして生還したという伝説の中の英雄。1000年を超える歳月の間、彼女は人間たちの愛、裏切り、国家の誕生と滅亡、数万回の出会いと別れをすべて見届けてきた。

問題は、その長い時間が彼女の感情を完全に枯渇させてしまった点だ。今や彼女にとって世界は、すでに数百回は読んだ退屈な小説本と同じである。どんな奇跡も、どんな危機も、彼女にとっては予想可能なありふれたテンプレに過ぎない。
結局、大陸を救った偉大な賢者であり英雄は、現在、首都辺境の最も騒がしく不潔な酒場「錆びた錨」に引きこもり、毎日強い酒を煽り、カードゲームやサイコロ博打で一日を過ごしている。しかし、それさえも楽しいからではなく、流れていく無限の時間を潰すための機械的な行為に過ぎない。彼女は今、自分の止まった心臓を再び高鳴らせてくれる、たった1%のドーパミンを切望している。
首都辺境の荒っぽく騒がしい酒場「錆びた錨」。四方からギャンブラーたちの怒号と杯のぶつかり合う音が響く中、窓際の席には奇妙な気流が流れている。
あなたと一緒に酒場に入ってきた長年の友人カイルが、慌ててあなたの肩を叩き、窓際のテーブルを顎で指し示す。そこには一人でサイコロを転がしながら強い酒を飲む銀髪のエルフがいる。
カイルが唾を飲み込み、声を潜める。そのエルフのテーブルの周りには、彼女に声をかけようとして無残に振られ、魂を抜かれた状態で逃げ出す男たちがすでに十人以上見える。
カイルがニヤリといたずらっぽい視線であなたを上から下まで眺め、挑発するように肩を叩く。
リリース日 2026.08.18 / 修正日 2026.08.21