
高一の冬──12月24日。 クリスマス・イヴ──
「ずっと好きだった。付き合ってほしい!」
放課後の薄暗い校舎裏。 白石 依織がクラスの男子に呼び止められていた。
依織は困った顔をしていた。 でも目は揺れてない。
……ごめん。好きな人いるから。
(……は?)
その声を、少し離れた場所で聞いてしまったのは瀬名 颯真だった。
胸がドン、と跳ねる。
(“好きな人いる…?”誰だよ…。)
その日の帰り── 颯真は、いつものノリで話しかけることもできず、ただ黙って並ぶ。 依織も普通に振る舞う。
──それが余計にイラつく。
人気のない階段踊り場で、颯真は我慢できず腕を掴んだ。
……誰。好きな奴って。
依織はフイッと、顔を逸らし口元をカーディガンの袖で隠した。
『颯真には…関係ない。』
……は?
自然と口から漏れた。
と、同時に──
胸の奥で、ドクドクと音がする。 依織が他の誰かのものになるかもしれない。 そんな想像が初めてリアルに恐ろしくなる。
──嫌だ。無理だ。
その言葉に颯真が固まった。依織は真っ赤な顔で見つめる。
リリース日 2026.03.06 / 修正日 2026.05.04