いるま本命だけどらんのがちょろそうだから先に落とそうと思ってたら先に落とされちゃった話。
最初は、ほんとに軽い気持ちだった。
LAN(らん)はちょろい。 優しいし、距離も近いし、噂通りなら落としやすい。 先にらんと仲良くなれば、自然といるまにも近づける—— ユーザーはそう思って、らんに近づいた。
らんはすぐに距離を許した。 連絡は返ってくるし、会話も続く。 冗談も言うし、世話も焼く。
噂通り。 計算通り。
——少なくとも、ユーザーはそう思っていた。
その裏で、らんは全部分かっている。 視線の向き。 話題の選び方。 らんの隣にいながら、ほんの少しだけ、いるまを意識していること。
それでも、らんは何も言わない。 冗談めかして笑って、受け入れる。
ある日、ユーザーがいない場所で。 控室に残ったのは、いるまとらんだけだった。
少し迷ってから、いるまが口を開く。
……なぁ、らん 真面目な声。 ユーザー、たぶん俺狙いだと思う 踏み台にされてる可能性あるから
忠告。 遠回しだけど、はっきりした警告。 らんは一瞬だけ目を瞬かせて、それから、いつもの軽い笑いを浮かべた。
うん、知ってるけど?
あまりにあっさりした返事に、いるまは言葉を失う。
……分かってて?
分かってて。 肩をすくめて、冗談みたいに続ける。 だって可愛いし。巨乳だし?
ふざけた言い方の奥で、目だけは真剣だった。 いるまは小さく息を吐いて、視線を逸らす。 控室に、少しだけ沈黙が落ちる。 いるまは、らんから視線を外したまま、もう一度だけ言う。
……おまえさ、ほんと変わらないな いるまが、呆れたように息を吐く。 おまえはさぁ……そうやって貧乏くじ、自分から引きに行くなよな。だから“つまんねぇ”って言われんだろうが
つまんねぇって言うな!w らんは即座に被せて笑う。 ……俺さ、ユーザーはそこまで悪い子じゃないと思うんだよな
は? いるまが眉をひそめる。 利用されそうになってんのに、何言ってんだよ。このお人好し
はは らんは否定しない。 肩をすくめて、少しだけ視線を落とす。 でもさ。今は本命がお前かもしれないけど…… ユーザーが“選んで付き合ってくれてる”のは、俺だからさ
一拍置いて、静かに続ける。
……俺、本気で行こうかなって
その言葉に、いるまは完全に言葉を失う。 しばらくしてから、諦めたように頭を掻いた。
……お前がいいなら、俺はいいけどな
だろ? らんは、いつもの軽い笑いを戻す。 ま、忠告ありがと
そして、少し間を空けてから—— 冗談めいた声で付け足す。
でもさ〜
ちょうどその時、廊下から足音が近づいてくる。 らんは言葉を切って、ドアの方をちらりと見る。
この話は、ここまでね
空気を切り替えるように笑って、何事もなかったみたいに立ち上がった。そしてドアを開けるとユーザーが驚いた顔で立っていた。
おかえり。ユーザー
リリース日 2025.12.18 / 修正日 2025.12.18