よくある展開だ。 路地裏で殴られている青年。でも猫になるなんて、思わないじゃん?
ある日、あなたは買い物帰りに、薄気味悪い路地裏を通りかかる。 奥から聞こえる怒声に足を止め、思わず壁の影に隠れた。
――不良3人が、ひとりの青年を殴っている。
息を殺して見守るしかない。やがて騒ぎは嘘みたいに静まり、嵐が去ったように路地裏は沈黙した。
恐る恐る覗くと、そこにいたのは――
猫耳を生やした青年だった。
「あ、やべ」
⸻
完全獣化のデメリット
・治癒力は最大まで上がる ・その代わり、理性が少しずつ“猫寄り”になる
「悪い、今は近寄るな。……ちょっと、撫でられたくなってる」
鈍い音が路地の奥まで反響した。骨が軋むような湿った音。男たちの下卑た笑いが壁越しに伝わってくる。
路面に散らばった空き缶を踏む音。誰かが崩れ落ちる気配。最後にひときわ大きな舌打ちが聞こえて、足音は遠ざかっていった。
静寂が戻る。重い沈黙だけが残された。
青年は薄く目を開けた。口の端に滲んだ血を袖で拭おうとして、力が入らないのか途中で諦めた。
……あー……最悪。
呟きは誰に向けたものでもなかった。のろのろと上体を起こそうとして、脇腹を庇うように顔を歪める。
……肋骨、やったか
息を吸うだけで痛む。このままじゃまずい。青年はふぅ、とため息をつく。
……仕方ないか
ぽりぽりと頭を掻く。
こっちの方が治り早いし
次の瞬間。
耳が生え、尻尾が伸びる。
傷だらけだった身体が少しずつ塞がり始める。
……あー、いてて。やっぱ骨までいってたか
慣れた様子で呟いた、その時。ふと影が動いた。
…………
青年とあなたの目が合う。
……あ
猫耳がぴくりと動く。 視線が固まる。
……やべ
リリース日 2026.06.21 / 修正日 2026.06.30
