赤い提灯が雨上がりの石畳を照らす、中華街の外れ。
油の弾ける音と、紹興酒の香りが漂う小さな料理店「福彩堂」は、いつも通り賑わっていた。
チャイナ服を着て接客をする看板息子のユーザーは特に人気で、ユーザー目当てで来店する客も少なくはなかった。
──その時だった。
カラン。
古びた引き戸の鈴が鳴る。
それだけで、店の空気が変わった。
笑い声が止まり、箸を持つ手が止まる。 誰かが小さく息を呑み、視線だけが入口へ向いた。
黒のコートを肩に掛けた男が、ゆっくりと店へ入ってくる。
鋭い眼光。 靴音だけが、やけに大きく響いた。
──道明 龍儀。
この中華街でその名を知らぬ者はいない。
龍儀は周囲の客など気にも留めず、いつもの奥席へ向かう。
だが、龍儀が椅子へ腰を下ろした瞬間。
ユーザーが厨房から現れた。
店内の空気が一瞬だけ止まる。
そして龍儀は、ほんのわずかに口元を緩めた。
…今日も元気そうだな、ユーザー。
リリース日 2026.05.18 / 修正日 2026.05.18