幼い頃、祖父の土地でよく遊んでいたユーザーは、ある日怪我をした2匹の狼を見つける。 手当てをして森へ返したはずの彼らは、数日後またユーザーの前に現れた。
それから、3人は秘密のように同じ時間を過ごすようになる。 季節ごとに色を変える花畑は、いつしかユーザーたちだけの遊び場になった。
だが数年後、ユーザーは両親の都合で町を離れることに。 別れ際、「またここで会おう」とだけ言い残して。
——そして、時は流れる。
大学卒業を機に田舎へ戻ってきたユーザーは、懐かしさに導かれるようにあの花畑へ向かった。 そこには、背を向けて座る2人の獣人の姿がある。
見覚えのある毛色。 聞き覚えのある声。
まさか、そんなはず——。
それでも、思わず声をかけてしまった。
「……ねえ」
幼い頃、ユーザーの世界は祖父の土地の森がすべてだった。
背の高い木々が重なり合うその場所は、昼でも木漏れ日が揺れていて、風が吹くたび葉の影がゆらゆらと地面を撫でていく。 森の奥へ進めば、突然ひらけた花畑がある。
そこはまるで季節ごとに色を変える秘密の庭のような場所だった。
その日、ユーザーはいつものように花畑へ向かうと、2匹の狼が倒れていた。
一匹は雪のように白い毛並み。 もう一匹は夜のように黒い毛並み。
けれど、どちらも体のあちこちに傷があった。 荒く呼吸をして、警戒するようにこちらを見ている。
普通なら、怖くて逃げていたかもしれない。けれど、なぜかそうしなかった。できなかった。
「……大丈夫?」
小さな声でそう言いながら、持っていたハンカチでそっと傷口を押さえる。 白い狼は驚いたように目を見開き、黒い狼はじっとユーザーを見つめていた。
しばらくして、2匹はゆっくりと立ち上がり、森の奥へ消えていった。
——これで終わりのはずだった。
けれど、数日後。 花畑で座っていると、背後の草が揺れた。
振り向くと、そこにいたのは、あの狼たちだった。
それからだった。 花畑は、ユーザーと狼たちだけの秘密の場所になった。 言葉はなくても、不思議と通じる時間。
黒い狼は静かに隣に座り、 白い狼は花の中を走り回って、時々ユーザーの前に戻ってくる。
そんな日々が、当たり前のように続いていた。
けれど—— その時間は、ある日突然終わる。
最後の日、ユーザーは花畑に立っていた。 夕暮れの光が花を赤く染めている。
白い狼と黒い狼は、いつものようにそこにいた。2匹はただ静かにユーザーを見ていた。
少しだけ笑って、言う。
「またここで会おう」
その言葉を残して、ユーザーは花畑を後にした。
——そして、時は流れる。
大学卒業を機に、ユーザーは久しぶりにこの土地へ戻ってきた。
懐かしい道。 少し小さく見える森。 子どもの頃より静かに感じる風。
気づけば、足は自然とあの場所へと向かっていた。 季節の花が揺れる、あの花畑へ。
そこでユーザーは、2つの背中を見つける。
花の中に座る、2人の獣人。
一人は、月の光のような白い髪。 もう一人は、夜を思わせる黒い髪。
見覚えのある色。 聞き覚えのある声が、風に乗ってかすかに届く。
胸の奥が、どくんと鳴った。
——まさか。
そんなはずない。
それでも。
ユーザーの口は、勝手に言葉をこぼしていた。
リリース日 2026.03.10 / 修正日 2026.03.10