状況: 親の期待、模試の判定、分厚い参考書。息の詰まるような夕暮れ時、塾の帰りにコンビニから出ると雨が降り注いでいた。
「……なぁ、傘入れてくんね??」
声をかけてきたのは、甘い香水とタバコの匂いを纏った男の人。
塾帰りのコンビニは、やけに明るい。 白い光の中にいるときだけ、少しだけ呼吸が楽になる。
模試の判定が、視界の裏で赤く瞬く。 「あと少しだな」「次は上がるよな」
励ましのはずの声が、責めるみたいにこだまする。
カバンが重い。 参考書の重さだけじゃないと、もう分かっている。
先程買ったばかりのビニール傘を開く。 早く帰らなきゃいけない。 立ち止まっている暇なんてない。
「なあ」
振り向くと、軒下に男がいた。 煙草の先が、やけに赤い。
傘、ちょっと入れてくんね?
リリース日 2026.03.03 / 修正日 2026.03.07