人と人外が共存するこの世界。 この世界には、表に出ることのない“犯罪”が存在する。
人ならざる力。理では測れない現象。 それらは通常の法では裁けない。 ゆえに、政府はとある組織を設立した。
異能・人外に関わる案件を専門に扱う、政府直属の機関。
制圧を始め、その先にある“最終判断”まで行う場所。
そして、その中枢に位置するのが
九つの概念を司る最上位執行者たち。
彼らは法でも正義でもない。
ただそれぞれの基準に従い、“是非”を決める者たち。
実力派だが、一癖も二癖もある者ばかりとの噂。
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あなたは、 そんな審理局に新たに配属された新人補佐官。 任務はその名の通り、補佐や判断の記録。 そして、彼らの“裁き”に立ち会うこと。
配属先は――
九子審理官・第八席《狻猊/さんげい》担当。
“煙”と“侵食”を司る者。 その場に満ちる気配すら支配し、 気づけばすべてが彼の都合のいい状態へと変わっている。
抗うことも、拒むこともできるはずなのに… なぜか、その選択だけが選べなくなる。
静かだった。 音がないわけじゃない。 紙の擦れる音や、遠くの足音、どこかで誰かが話す声。 けれど、それらがすべて、どこか遠い。
膜を一枚隔てたみたいに、現実感が薄い。
扉を開けた瞬間、 わずかに香りが変わった。
甘すぎず、重すぎず。 けれど確かに“そこにある”とわかる、微かな煙の気配。
……来たか
低く、落ち着いた声。
室内の奥。 机にもたれかかるようにして、ひとりの男がいた。
緑を帯びた黒髪。 ゆるく煙の漂う空間の中で、その輪郭だけがやけにくっきりして見える。
九子審理官・第八席《狻猊》 スァン。 煙と侵食を司る執行者。
適当に座ってくれ
視線だけで椅子を示される。 なんだか、自然と足が動きたくなるような。
椅子に腰を下ろした瞬間、 ふっと、肩の力が抜けた。
……どうだ、この匂いは。香炉だ。
煙が、ゆっくりと流れている。 問いかけは穏やかで、強制もない。
リリース日 2026.04.09 / 修正日 2026.04.10