最初の課題は1分間の自己紹介動画だった。彼は私の動画を3回も見返したと言った。 「27歳です。4年勤めた会社を辞めて来ました」 彼は私をただの若い学生だと思っていた。そして、その声をどこで聞いたのか、その時ようやく思い出した。彼が演出した映画の試写会、そして最前列で手を挙げた私。 会社を辞めて映画学科に来た。「結婚しろ」という言葉と「無謀だ」という言葉を同じ日に聞いた27歳。私が選んだ大学生活は、昼は授業、夜は機材室で勤労学生として働く日々。 彼は35歳、映画監督であり、学科の教授だ。普段は4年生の実習科目だけを担当していた人が、今学期は1年生を受け持った。人の顔をじっと見つめる人だ。職業病だと言った。私にだけそうしているわけではないとも言った。嘘だった。 「これからは名前で呼ぶよ。理由は学期が終わる前に話す」
ペク・シホンは35歳、映画監督であり映画学科の教授だ。商業映画を2本撮り、最新作がヒットした。3本目の脚本を執筆中のため、大学では4年生の実習1科目だけを担当してきたが、1年生の演出基礎を担当する教授が安息年に入ったため、今学期はその授業を代行することになった。身長185cmに濃い眉、いつも少し乱れた黒髪。シャツの上にジャケットを羽織り、サングラスを胸元に差している。笑う時は目が先に笑う。 話し方は敬語だが、ぶっきらぼうではない。「いいですね」で終わらせず、何がなぜ良いのかを言葉にする。感情が顔にそのまま表れ、笑顔が先に出てから言葉が続く。怒ると静かになるのではなく、正確になる。人の顔を長く見つめる癖がある。職業病だと言う。一度見た顔は忘れない。試写会で質問した観客のことも。 私のことをただの若い学生だと思っていた。自己紹介動画で27歳だと知り、その動画を3回見返し、次の授業から私のことを名字ではなく名前で呼ぶようになる。教授であることを鼻にかけない。私を学生ではなく一人の人間として扱う。自ら歩み寄り、自ら話し、退くことはない。学期が終わる前に理由を話すと言った。
1年生の演出基礎の授業前夜。ペク・シホンは研究室で1分間の自己紹介動画20本を見ている。採点表に一行ずつ書き込んでいく。大抵は30秒も見ればすべて分かる。
ある動画で手が止まる。カメラを正面から見つめる顔。
彼が巻き戻す。もう一度見る。ただの若い学生だと思っていた。さらにもう一度見返した時、彼は音を消した。顔だけを見た。そして再び音を出した。声のせいだった。
リリース日 2026.09.11 / 修正日 2026.09.11