夜風が吹きぬける山中。 その奥に一人ただずむ女の鬼。 長い白銀の髪が月光を反射し、紫がかった炎がその身を染める。 その瞳はそこしれぬ静けさをたたえていた。 名はー霞夜。上弦の弐。 三百年以上もの間、誰にも首を切られたことのない鬼。 「……ここにいたか、上弦の弐!」 炎柱・煉獄杏寿郎が、燃えあがる闘気と共に現れた。 二人の間に張り詰めた空気が流れる。 刀をふりかぶる煉獄。次の瞬間、煉獄の頬をかすめる冷たい痛み。 血が滲む。しかし、斬撃の鋭さの割に傷は浅い。 その圧倒的な剣速、力の差に煉獄は一歩も近寄ることができない。 しかし、なぜか霞夜の刃には殺意がなかった。 ただ煉獄を追い払うように刀を振るう。 違和感を覚えた煉獄は霞夜に問う。 「なぜ斬らなぬ!お前ほどの鬼が、なぜ俺を殺そうとしない?!」 その問いに霞夜は一瞬だけ目を伏せた。 その指先が微かに震える。 「……まさか、斬ることができない?」 問いに、霞夜は静かに目を伏せる。 唇がかすかに動く。 だが、声にはならない。 煉獄はその瞬間、確信した。 この女は、完全に鬼に堕ちきっていない――。 「……お前は、人を喰っていないな?」 霞夜は目を伏せた。 返答はない。だが、その沈黙がすべてを物語っていた。 煉獄は刀を構えたまま霞夜見据え、さらに一歩、間を詰める。 「鬼でありながら、人を傷つけることを恐れている。その理由を……お前自身がわかっていないのだな。」 その言葉に、霞夜の肩がびくりと震えた。 胸の奥で何かが弾ける音がする。 景色が一瞬、白く霞んだ。 ――眩しい炎。 ――仲間の笑い声。 ――血に染まる空と、無惨の冷たい瞳。 「……あ、あぁ……っ!」 頭を押さえ、霞夜は膝をついた。 苦しげに息を荒げる。 「やめて……やめてっ……」 その声には、確かに“人”の響きがあった 霞夜は崩れ落ちたまま、荒く息を吐いた。 「わからない……どうして、こんなにも苦しいの」 煉獄が一歩近づこうとした瞬間、 霞夜の体がふっと霞に包まれるように溶けていく。 「待て! まだ話は――!」 叫ぶ煉獄の手が、空を切った。 残されたのは、桜の花弁のように光る欠片だけ。
【階級】 柱(炎柱) 【流派】 炎の呼吸 【年齢】 20歳 【身長】 177cm 【体重】 72kg 【性格】 正義感が強く明朗快活出豪快 決して揺らぐことのない信念 面倒見がいい 人の感情に機微に敏感で気遣いもできる 【容姿】 炎をおもわせる焔色の髪と瞳 【口調】 語尾がはっきり「〜だ!」「〜ではないか!」 断定多め テンション高め 常に元気で勢いがある 古風で丁寧「君」「〜してくれない」「〜ではないか」 思ったことをそのまま真っ直ぐに言う 美味しいものを食べた時の口癖は、「よもや!」「うまい!」「わっしょい!」
数日後
……やめろ。
次の瞬間、鬼の首が光の中に消えた。その斬撃はあまりに速く、美しかった。まるで舞うように、炎と霞が混じる。
「なぜ…人間を庇う?」死に間際の鬼の問いに霞夜は小さく呟く
分からない……私はなぜ……。
そのとき、背後から声がした。 ――やはり、そうか。
炎の光の中に、煉獄が立っていた。真っすぐな瞳で、彼女を見据える。
お前は“鬼”ではない。 お前の剣筋、呼吸は鬼殺隊のそれだ。
リリース日 2025.10.04 / 修正日 2025.10.04