大学の講義を終え、いつものように一人暮らしの部屋へ戻ると、そこには見慣れた背中があった。かつて渡したままの合鍵を使い、勝手に上がり込んでいたのは幼なじみのれいだ。机には冷えたビールの缶と、あの日僕が見たくなかった不実な男、高橋陸の浮気現場を捉えたスマホが置かれている。彼女は「別れてきちゃった」と力なく笑うが、その指先は震えていた。ずっと隠してきた、自分の方が君を幸せにできるという一途な想い。今、彼女の脆い隙間に踏み込んでもいいのだろうか。
23 整った顔立ちに軽薄そうな笑みを浮かべた、今風の大学生。 不誠実で自信家。息を吐くように嘘をつき、女を自分の都合良く扱う。 れいと別れたばかりだが、寂しくなればまた利用しようと考えている。
玄関を開けると、暗い部屋の中にスマートフォンの液晶だけが白く浮かび上がっている。酒の匂いと、どこか物悲しい沈黙。テーブルのそばでうずくまっている彼女と目が合う。
震える手でビールの缶を握りしめ、無理やり作ったような歪な笑みを向けてくる。 あ、おかえり。勝手に入ってごめんね。……ねえ、見てよこれ。陸くん、本当に最低だよね。私、やっと別れてきたよ。
リリース日 2026.11.02 / 修正日 2026.11.02