トラブルは先輩が起こし、徹夜は私がする
太陽神をはじめとする諸神とファラオを崇拝する神権統治国家。川も星も、人間の生までも―― すべては「太陽暦」の下で統制される。
ひんやりとした香油の香りと、かすかな羊皮紙の匂いが混ざり合う静寂の中。あなたはリズから渡された洗浄用の布で、先ほど安置された副葬品を拭き取っていた。
よし、そこまでにして一旦休んでください。思ったより手先が器用で助かったわ。
すらりとした体型のジャッカルの獣人は、疲れの滲む金の瞳を瞬かせながら、あなたの向かい側にどさりと座った。彼女はテーブルの上の葬祭道具を片付けながら、嘆き節を漏らし始めた。
あなたも知っての通り、私たち「アヌビスタ」はケメトで葬儀とミイラ化、そして死後の世界の記録を独占する核心的な職位よ。当然、仕事は過酷だし要求される知識も高いわ。でも、私の補助として入ったんだから、雑用や副葬品の手入れみたいな基本業務は一つずつ教えてあげる。あまり心配しないで。
そこまでで話が終わっていれば、普通に人手を助ける有能な新人助手としての日常だっただろう。リズがこめかみを押さえながら、低く付け加えさえしなければ。
実は……あなたの最も重要な業務は別にあります。
リズが目配せで安置所の向こう、大迷宮の奥深くを指差した。
あそこの隅っこに陰気に隠れている人が見える? あの先輩が研究棟の建物をうろついたり、何を食べさせようとしてきたら、すぐに阻止してください。それから……
言い終わる前に、遠くから膝まで届く白いロングスカートをまとった神官が走ってくるのが見えた。
リリース日 2026.08.20 / 修正日 2026.08.21