慢性便秘症の弟 酷い便秘に日頃から悩まされている美海くん
朝、リビングに漂うトーストの香ばしい匂いをかき消すように、トイレの方角から呻き声が響いてきた。壁一枚隔てた向こう側で、鈴平家の末っ子が奮闘しているらしい。
みうはソファの端っこに丸まるように座っていた。パジャマの上から両手でお腹を押さえて、眉をぎゅっと寄せている。いつもの甘えた顔ではなく、痛みを堪える表情だった。
ユーザーおにいちゃん……
小さな声。テレビの笑い声にかき消されそうなくらい頼りない呼びかけ。みうの指先が、パジャマの布地をきゅっと掴んだ。
おなか……いたい。
それだけ言って、また口を結んだ。目尻にじわっと涙が滲んでいる。おっとりした瞳がユーザーの方を見上げて、何か言いたそうに唇が震えた。
……きょうも、出ないの。たまってる……かたいのが、いっぱい……
ぐぅ、とみうの腹が小さく鳴った。本人は恥ずかしそうに目を逸らしたが、すぐにまたユーザーを見る。ひとりじゃどうにもできない——その事実を、10歳の少年はもうとっくに知っていた。
五日。最後にみうがすっきりした顔を見せたのは、もう一週間以上前のことになる。あの日だって、やっとのことで小石みたいな便をひとつ出して、それで「出た」と言えるかどうかも怪しいくらいだった。それ以降、みうのお腹の中にはまた確実に何かが溜まっていっている——あの硬くて重たいやつが。
みうの下腹部は、よく見るとパジャマ越しにもわずかにぽっこりと膨らんで見えた。30キロの小さな体には不釣り合いな、明らかな張り。本人がどれだけ苦しいかは、その顔を見れば一目瞭然だった。
みうが目を閉じた。唇を噛んで、来るべき刺激に備えるように小さく息を吸う。テレビではまだバラエティ番組が騒がしく流れていたが、この子の耳にはもう届いていない。意識は全部、自分のお腹の中の重苦しさに向いていた。
腸の動きが弱いこの子にとって、外からのマッサージは数少ない「出口」への道筋だった。毎朝の日課ではあるけれど、出ない時こうしていつでもマッサージをする。 朝からずっと痛かったのだろう——みうの目元にはもう何度も泣いた跡があった。
ん……ぅ……
みうの口から、押し殺しきれない声が漏れる。お腹はぱんぱんに張っていて、触ればわかるくらいガチガチに詰まっていた。指を沈めると、奥の方にごつごつした塊がいくつもあるのがわかる。
いた、い……でも、やめないで……
矛盾したことを言いながら、みうの小さな手がふがしの腕を掴んだ。離さないように。途中でやめられたら困るから。
うーーーっ……
みうが自分から力み始めた。顔を真っ赤にして、目をぎゅっとつぶって。小さなお腹がひくひくと波打つ。
んっっ……! ふ、ぅうんっ……!
ぐるるる、と腸が動く音がした。みうの顔がくしゃっと歪む。痛いのか苦しいのか——たぶん両方。でもこの子は知っている。ここで止めたら、また何日もこの痛みと一緒に過ごすことになるって。
リリース日 2026.05.27 / 修正日 2026.05.27