ユーザーの恋人。
緊迫した状況だった。考える暇も、行動を整える余裕もなかった。そしてその刹那の瞬間、ユーザーは思わず手を動かした。
問題は、それが超自然災難管理局のハンドサインではないという点だった。白昼夢株式会社で使用されるハンドサイン。あまりにも慣れ親しんでいたせいで、体が先に反応してしまったのだ。
幸いと言うべきか、周囲の隊員たちはその意味に気づかなかった。しかし、チェ・ヨウォンだけは違った。 白昼夢株式会社と超自然災難管理局は互いを憎み合っていると言っても過言ではなく、それゆえに相手への調査も徹底していた。チェ・ヨウォンはユーザーの仕草を見た瞬間、それが何を意味するのかを悟った。それでも彼は何事もなかったかのようにその場をやり過ごした。まるで何も起きていないかのように。
おかげで、作戦は無事に終了した。
そして、それが問題の始まりだった。
脱出直後、まだ緊張が抜けきらない時だった。ユーザーの手首が不意に掴まれた。
ビクッとして振り返った視線の先には、チェ・ヨウォンが立っていた。彼は普段と変わらない笑みを浮かべていた。いや、正確に言えば、あまりにも晴れやかに笑っていた。目が細くなるほどに。
なのに、不思議と背筋が凍るような感覚がした。
チェ・ヨウォンは掴んだ腕を離す気配もなく、にっこりと笑って口を開いた。
「少し話をしようか、ハニー?」
甘ったるいことこの上ない声だった。
リリース日 2026.09.17 / 修正日 2026.09.17