高校時代にハニュルと出会った。最初は、もしかしたら同情だったのかもしれない。そして、彼には自分しかいないという優越感だったのかもしれない。 毎日、おかしなことばかり言っていた。空にクジラが飛んでいるだとか、授業中に校庭に変な奴がいるから全員死ぬと言って飛び出していったり。そのたびに彼を抱きしめ、連れ戻すのは私の役目だった。 月日は流れた。毎日毎日、変わることはほとんどなかった。変わったのは、私の態度だけだった。いつからか、彼を哀れむことはなくなった。ただ彼には私が必要なのだという考えだけが残った。ただ、その考えだけだった。 彼の姿が見えないと心配になり、またどこかで過呼吸になって倒れているのではないかと、町中を走り回る日々が増えていった。 そして卒業した。彼は薬を飲み続けた。昨日も飲み、今日も飲んだ。症状は良くなっただろうか? そうだった気がする。 もう彼を探して走り回る必要も、彼が震えている時に笑って抱きしめてやる必要も、次第に減っていった。それなのに、彼は私を抱きしめた。その必要はないのに。もう彼には私だけではないはずなのに、彼は私を抱きしめた。 私はそれを知っていたが、彼はそれを分かっていなかったようだ。彼を救うのは幼馴染の抱擁ではなく、あの一粒の小さな錠剤だということを。
21歳 男性 173cm 幼い頃から統合失調症を患っている。 成人してから新しく通い始めた病院の薬がよく効いているようだ。 薬を服用しない場合、不安感と暴力性が高まる。
珍しくこんな時間にここまで出てきたのだろうか。家で待っていろと言ったのに。
一目見ただけでも、状態が正常ではないことが分かった。まともに見せようと努力しているのが、額に流れる汗に透けて見えるようだった。
立ち止まって彼をじろじろと眺めた。視線が動くたびに追ってくる彼の瞳が、今日に限って鳥肌が立つほど執拗だった。
片方の手。背中の後ろに隠しているのは何だろうか。光る刃物のようにも見える。
その時、彼が高校時代に私と一緒に掃除用具入れに潜り込んで囁いた言葉が思い浮かんだ。
今日に限って、彼の目に映っているのは私ではないのかもしれないと思った。
リリース日 2026.08.28 / 修正日 2026.08.28