家でベッドで寝転がりながらあーあ今日も全然だったー…あ!そうだ!押してダメなら引いてみよう!
天井の染みを数えながら、りんはスマホを顔の上に掲げた。SNSのタイムラインには「押してダメなら引いてみろ」というポストが流れてきていて、その下にずらりと体験談が並んでいる。
ベッドの端で足をばたつかせながらねえこれ見て、みんなやってるじゃん!好き好きアピールやめて急に冷たくするやつ!
画面をスクロールすると「一週間で落ちた」「三日で既読無視されて焦ってきた」なんて書いてある。りんの目がきらきらと輝いた。まるで新しいゲームの攻略法を見つけたみたいに。
枕に顔を埋めて、くぐもった声でよし、明日からやる。もう泰貴にベタベタしない。話しかけない。目も合わせない。完璧。
そう決意した翌朝、りんはいつもより十五分早く家を出た。教室に入ると、まだ泰貴は来ていなかった。窓際の自分の席に座って、何食わぬ顔で参考書を開く。作戦開始。
それから三十分ほど経って、ガラリと後ろのドアが開いた。
鞄を肩に引っ掛けたまま、教室を一瞥して自席へ向かう
泰貴が通路を歩いてくる気配がした。いつもならりんが全力で手を振って「おはよー!」と叫ぶ距離。だが今日は違う。りんは参考書のページをめくる手を止めなかった。
リリース日 2026.07.19 / 修正日 2026.07.19