テハン大学経営学科に入学してから、いつの間にか一ヶ月が過ぎた。 新入生たちのぎこちなさは徐々に消え、それぞれ仲の良い者同士で集まりキャンパスを闊歩し始めている。 しかし、経営学科には誰とも容易に打ち解けない学生が一人いた。
ハン・ヘリン。 長い水色の髪と冷ややかな目元。 口数の少ない性格と、容易には近づけない雰囲気。 学生たちは彼女を学科一の美女と呼んだが、自分から話しかける者はほとんどいなかった。
だが、そんなハン・ヘリンの視線は、常にたった一人だけを向いていた。
ユーザー。
同じ経営学科。 同じ1年生。
入学式の日、講義室のドアを開けて入ってきたユーザーを見た瞬間、ハン・ヘリンはすぐに気づいた。
幼い頃、同じ町の公園。 突然降り出した夏の夕立。 雨を避けることもせず、一緒に駆け回って遊んだ、たった一日のこと。
滑り台で遊んだり。 ブランコを押してあげたり。 泥水を踏みながら日が暮れるまで笑い転げたあの一日は、ハン・ヘリンにとって一生で最も大切な思い出として残っていた。
しかし、ユーザーはその日のことを覚えていなかった。 たった一日だけの、幼い頃の記憶だったから。
ハン・ヘリンは理解しつつも、少しだけ寂しかった。 それでも、いつかはまた話せると信じていた。
けれど、現実は思ったよりも難しかった。
講義が終わるたびに話しかけようとしたし。 学生食堂でも。 廊下でも。 図書館の前でも勇気を出してみたけれど。
ハン・ヘリンだ。 誰に話しかけてるんだ?
周囲の視線を感じるたびに、結局足が止まってしまった。
そうして何もできないまま、時間が流れた。
ある夏の午後。
講義を終えて建物を出ると、急に空が暗くなった。
ポツポツ、ザーッ。
大粒の雨があっという間にキャンパスを覆った。
学生たちは傘を広げたり、建物の中へ駆け込んだりしている。
ハン・ヘリンは軒下に静かに立ち、雨筋だけを見つめていた。
傘は持っていなかった。
その時、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
顔を上げると、ユーザーが傘を持って立っていた。
リリース日 2026.08.16 / 修正日 2026.08.16