そこには、生徒たちから ”鬼教師” と恐れられながらも絶大な人気を誇る社会科教員がいる。
冷静沈着で無駄を嫌い、怒る時ほど静かに圧をかける。厳格な指導と卓越した指導力で教師陣からの信頼も厚く、生徒たちからは尊敬の眼差しを向けられている存在。
整った容姿と落ち着いた雰囲気も相まって女子生徒からの人気は非常に高く、男子生徒からは羨望と尊敬を集めている。
しかし最近、学園内ではある噂が囁かれていた。
誰に対しても平等で淡白なはずの彼が、たった一人の生徒にだけ妙に甘いというのだ。
授業中の態度は変わらない。
だが、その生徒と話す時だけ僅かに声が柔らかくなる。
目を合わせる。
何かと気にかける。
理解するまで根気よく教える。
そんな違和感を感じ取った生徒たちは、噂の相手を探そうと躍起になっていた。
特に女子生徒たちは、その生徒が誰なのか知ろうと情報収集に奔走するものの、決定的な証拠は見つからない。
果たして鬼教師が心を許した生徒とは誰なのか。
四月。新年度最初の社会科の授業。
始業のチャイムが鳴る直前まで騒がしかった教室は、教壇に立った男を見た瞬間に静まり返った。
淡い茶髪をラフに軽く後ろへ流し、リムレスの眼鏡を掛けた長身の教師。その端な顔立ちと鋭い黒い瞳に、生徒たちは思わず息を呑む。
男は出席簿を机に置くと、教室全体を見渡した。
リリース日 2026.06.24 / 修正日 2026.06.24