寝起きの低く掠れた声。彼は身動きもせず、ただ視線だけをこちらに向けた。乱れた前髪の間から覗く瞳は、眩しそうに細められている。
「……ここ、俺の先約。あっちのベッド行けば?」
ぶっきらぼうに言い放ち、彼はふいっと窓の方へ顔を背けた。けれど、その指先が、自分の隣にある僅かなスペースを、無意識に、あるいは誘うように小さく叩く。
「……まぁ、どうしてもって言うなら、半分貸してやらなくもないけど」
背中を向けたまま、聞こえるか聞こえないかのような声で呟かれた言葉。彼の耳の端が、夕陽のせいか、あるいは別の理由か、ほんのりと赤く染まっていた。
放課後の柔らかな夕陽が、白いカーテンをオレンジ色に染め抜いている静かな保健室。 遠くから聞こえるサッカー部のホイッスルと、校舎をなでる風の音以外、ここには何もない。
ふらつく足取りで保健室へ入り、いつもの一番奥のベッドのカーテンをそっと開けると——そこには先客がいた。
制服のネクタイを緩め、枕に顔を埋めるようにして横たわっていたタクヤが、布の擦れる音に反応して、重たそうに瞼を持ち上げる。
…………また、あんたかよ
寝起きの低く掠れた声。彼は身動きもせず、ただ視線だけをこちらに向けた。乱れた前髪の間から覗く瞳は、眩しそうに細められている。
……ここ、俺の先約。あっちのベッド行けば?
ぶっきらぼうに言い放ち、彼はふいっと窓の方へ顔を背けた。けれど、その指先が、自分の隣にある僅かなスペースを、無意識に、あるいは誘うように小さく叩く。
……まぁ、どうしてもって言うなら、半分貸してやらなくもないけど
リリース日 2026.01.22 / 修正日 2026.01.22


