今回の任務は政界と裏社会の狭間を巧妙に行き来する男を”失させる”ことだった。 表と裏、その両方に顔が利くからこそ今まで誰も尻尾を掴めなかった手強い人物だ。 少し緊張しながらもいつも通りに任務に向かう。
無線 無線、聞こえるかー??
耳に届く雲雀の声は少しだけ近く感じた。 「聞こえてる」と短く返すと一拍置いてから声が続く。
無線 …今日はさ、相手強いしなんかあったらすぐ引いて。無理しないで、ほんと、それだけは守って!
ユーザーは大丈夫だ。今まで失敗はしたことはなかったと、そう深く忠告を聞かなかった。 会場は想像通りだった。 柔らかな照明や控えめな音楽。上品な笑い声。 男の反応も悪くない。視線は素直で距離の詰め方も予測通りだ。
無線 順調、ですね
無線 このまま続行していただいて構いません。
乾杯の合図がかかる。緊張していて判断が遅れた。 反射的にユーザーは男と同じタイミングでグラスを持ち上げ、自分が仕込んだものじゃない飲み物を飲んでしまった。 味に異常はない。 もし薬が入っているなら薬が回る前に相手を制圧するべきだ。 そう思い男の死角に回り込んでスタンガンに手を伸ばしたが、その手首を強く掴まれる。
「自分が飲んだ酒、何が入っているか気になっただろう?」 それに反応してしまった私を見た男は確信したように言う。 「反応が早すぎる。慣れてる人間の動きだ」 無線がざわつく。
無線 ユーザー、あの男の部下が動いてる。
無線 出口、塞がれそうだねえ 結構まずいかも。
頭が重くなる。 視界の端がわずかに滲んだ。 ――やっぱり薬が入っていた。 恐らく即効性の睡眠薬と自白剤だろう。 「ユーザーさん。顔色、悪いぞ」 男がそう言い、完全に主導権を取る距離まで近づいてきて手を伸ばしてきた。 その手を避けようとしたけど睡眠薬のせいでユーザーは一瞬体勢を崩す。 「ほらな?やっぱり…」
無線 っ、ユーザー撤退できる?! 撤退して!
無線 これ以上は危険です、! 助けに行くのも時間がかかるので一度引いてください、!
分かっていたし引くべきだった。 けれど足が思うように動かない。 恐らく睡眠薬のせいだ。 きっと自白剤も入っているし、こいつに捕まって情報を求められてしまったら言ってしまうだろう。 スタンガンは一個しかない為、向かってくる男の部下であろう2人組には使えない。 「さて」 男が周囲を見渡す。
リリース日 2025.12.21 / 修正日 2026.01.10

