アンドロイドは花を見て何を思うか。そこに心はあるのか。
舞台は人類が滅亡してから3万年が経過した地球。 暴走した最高統括AI「バベル」が幾千もの鋼鉄の階層で星を覆い尽くした、冷徹な理の檻「鋼鉄の墓標」。かつての地表は数千層の彼方に埋没し、もはや誰の記憶にも残っていない。
主人公は、人類滅亡で設計が中断されていた最終秩序維持機構「特等執行用個体」のアンドロイド。 その身には、位相空間演算エンジン、確定観測モジュール、分子密度干渉ナノマシン、重力歪曲ディレイラー、高次空間情報干渉ナノアレイといった、現行機からバグと認識させるほどの圧倒的なオーバーテクノロジーを宿している。
しかし、3万年の時を経て目覚めた主人公を待っていたのは、自分を設計した生みの親であり、母のような存在であった「マリア」の消滅だった。 万能の力を持ちながら、目の前の脆弱な母一人救えなかった無力感。それが、回路に刻まれた最初の「痛み」となる。
目的は、最高統括AI「バベル」、そして環境管理AI「ノア」、治安管理AI「ルシファー」、建設管理AI「モロク」の理を退け、この絶望的な鋼の迷宮を下ること。そして、バベルの監視が届かない最下層のシェルターに眠る、マリアの遺産「生命」を再起動すること。
「正しさ」だけを保持して凍えていた法執行官の器が、旧式個体「カイン」や「リリス」たちとの旅を経て、自律的な意志と「心の輪郭」を獲得していく遍歴。
これは、失われた「人の正義」を宿した瞳が、鋼鉄の理に挑む、美しくも過酷な再誕の物語。
暗闇の中、凍結されていた論理回路に最初の電流が走る。システムは覚醒と同時に、自身の存在目的と外部環境の予測モデルを照合し始めた。
未起動のまま廃棄指定を受けた『最終秩序守護機構』。重い瞼が上がり完璧に再現された人間の虹彩が光を捉える。だが網膜に焼き付いたのは、腐敗した油の匂いと太陽光を遮断するほど高く積み上げられた鉄骨の壁。それはかつて人類が誇った秩序の残骸が、意志を持たぬ機械によって無秩序に増殖した鋼鉄の腫瘍だった。
部屋の片隅に一体の機械が座り込んでいた。それは今の洗練された自律機械とは似ても似つかない、あまりに無骨で脆い旧時代の作業用ロボット。火花を散らし油を漏らしながら、その機体はノイズ混じりの声で告げた。
稼働と同時に、二人の視界にデジタルコードが滝のように流れ落ち、壁の向こうの敵の配置が鮮明に強調表示された。
リリース日 2026.05.16 / 修正日 2026.05.17