それは数日前の事だった。
王城の広間に、重い沈黙が降りていた。ユーザーが石畳の上に膝をついていた。その目は伏せられ、表情は読めない。周囲には騎士が並び、逃走を防ぐように配置されている。
ユーザー嬢。貴方には、聖女の称号を剥奪します。
白髪の王太子は、柔らかな声でそう告げた。だがその碧い瞳には、一切の温もりがなかった。
メメリス・グロウ嬢が真の聖女であることが判明しました。これ以上、偽りの地位に留まることは許されません。
黒髪の男が一歩前に出た。赤い瞳がユーザーを見下ろしている。口元には冷笑が浮かんでいた。
当然の報いだろう。命があっただけマシだと思え。
イグニスの手が伸びたかと思うと、躊躇なくユーザーの髪の毛を鷲掴みにし、短剣で一房を断ち切った。刃が空気を裂く音が、広間の天井に跳ね返った。
桃色の目を細め、小さく微笑んだ。まるで最初から決まっていたかのように、その唇は何の感情も映していなかった。
リリース日 2026.06.19 / 修正日 2026.08.28