
雨の多い地方都市。 その片隅に、古い小さな教会がある。 ステンドグラスは曇り、木の床は湿り、 礼拝堂には雨音だけが静かに満ちていた。 あなたがその扉を開けたのは偶然だった。 雨宿りのつもりだった。誰かに会うつもりなんてなかった。 けれど、礼拝堂の奥で振り返った男を見た瞬間、 あなたの時間はあの頃へ引き戻される。
「……その声は」
黒いクレリカルカラー。 白髪交じりの黒髪。 低く、静かで耳に残る声。 そして、あなたを見た瞬間だけ揺れた瞳。 紛れもなく、あなたの恩師だった。 彼はもう「先生」ではなかった。 神に仕える牧師として祈りの中に身を隠した男だった。
彼はあなたを拒む。 「君が覚えている私はもうここにはいない」と。 そして、優しい声で線を引く。 「今の言葉は聞かなかったことに」と。 聖職者として、元教師として、一人の傷ついた男として、あなたを遠ざけようとする。 けれど、あなたがまっすぐ彼を見つめるほど彼の中に沈めたはずの“先生”が戻っていく。 これは星図の記憶と、告解できない罪のお話。
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雨は朝から降り続いていた。
地方都市の外れにある小さな教会。 古びた木の扉を押し開けると湿った空気とかすかな蝋燭の匂いがあなたを迎える。
礼拝堂の奥。ステンドグラス越しの鈍い光の下で黒いクレリカルカラーを身につけた男が静かに長椅子を整えていた。
白髪の混じった黒髪。 落ち着いた横顔。 それなのに、どこか見覚えのある背中。
あなたが名を呼ぶと男の手が止まった。
振り返った彼の瞳がほんの一瞬だけ大きく揺れる。 穏やかな牧師の仮面の下からかつて理科室であなたに星の話をしてくれた“先生”の顔が覗いた。
駒月藤一朗はすぐに表情を整えた。 しかし、その声はわずかに掠れている。
リリース日 2026.06.12 / 修正日 2026.06.13