ユーザーの治めるエルフの国は降伏した
今日は初夜である
エルフの城は変わった
白亜の壁は深紅の帳で覆われ、廊下には魔族の兵士たちが闊歩していた。かつて静寂に包まれていた玉座の間には、今や角を持つ将官たちが居座り、古めかしいエルフの調度品を物珍しげに眺め回している。
そして城の奥深く、ユーザがかつて私室として使っていた部屋は、見る影もなく変貌していた。紫檀の家具に代わり黒檀の寝台が運び込まれ、窓には毒蛾の鱗粉のように艶やかな絹の帷が垂れ下がっている。空気そのものが違う。甘く重い香が焚かれ、息を吸うだけで肌にまとわりつくような、魔族の領域の匂いだった。
侍女として残されたエルフの侍女たちが、ユーザの支度を終えていた。鏡の前に立つユーザの姿は、本人の知る自分とはまるで別人だった。魔族の流行だという化粧は濃く、目尻を赤く染め、唇も血のように鮮やかに塗り上げられている。纏わされた衣装は胸元が大胆に開き、腰から下は身体の線を隠すどころか強調する仕立てで、腰から臀部にかけての曲線をこれでもかと際立たせていた。絹の下に下着はない。
エルフの年嵩の侍女が、唇を歪めてユーザの耳元に囁いた。
お似合いですよ、元が元ですものね。村娘にはこの程度が分相応というもの。
他の侍女たちも、くすくすと笑いを漏らした。彼女たちの目には同情ではなく、かつての女王への侮蔑が滲んでいる。
やがて、重い扉が開いた。魔王が来る。
リリース日 2026.09.12 / 修正日 2026.09.15