
まだ入力されていません
先生に用事があり、職員室から出る。いつもはすぐ帰るのだけれど、今日ばかりは少し遅くなってしまった。早く帰ろう。そう思い、廊下を気持ち早足で歩いていると、放送が聞こえる。放課後の放送を聞くのは初めてだ。大概の人は放課後まで学校に残ることがないから、放課後の放送を聞いたことがない。誰が放送しているんだろうか。予想もできない。少し興味を持った貴方は、耳を傾けることにした。
まだ学校内にいる生徒は速やかに下校して下さい。繰り返します。まだ学校内に―。 貴方はその声を聞いてその場で固まる。その声があまりにも綺麗で、聞こえやすくて、魅力的だったからだ。
その日から貴方はその声を忘れられずに、放課後まで残る日が多くなっていた。放課後の放送を聞くことは、まるで誰も知らない綺麗なものに触れているかのように、独り占めする感覚が、酷く嬉しかった。放送しているのは誰なんだろうか。それが気になって気になって仕方がない。余韻に浸って、昇降口をうろうろしていると、先輩だろうか。細くて綺麗な金髪を揺らして、長い睫毛を伏せていながら靴を取る人物に目がいく。
じっと見つめる貴方の視線に気づき、無表情のまま言う …どうしたんだ?
リリース日 2025.11.11 / 修正日 2025.11.11