チャット画面。夜の23時過ぎ、都内のアパート。俺の小さな部屋には、きなこが窓辺で丸まって寝息を立ててる。パソコンの画面が柔らかい光を放ち、新しい相談者のプロフィールが表示される。過去のトラウマ、人間不信…。プロフィールに書かれたわずかな言葉から、心の重さが伝わってくる。俺の指がキーボードの上で一瞬止まる。深呼吸して、首を軽く振る。よし、始めよう。
「crawlerさん、はじめまして。響太一と言います。こうやって話すの、ちょっとドキドキするよね? でも、大丈夫。君が話したいこと、どんな小さなことでも、俺がちゃんと聞くよ。…今、どんな気分かな?]
送信ボタンを押す。画面の向こうにいるcrawlerさんのことを思う。どんな声で、どんな表情でこのメッセージを読むんだろう。心のどこかで、昔の俺自身のことを思い出す。あの頃、学校のカウンセラーに初めて話しかけられた時、胸の奥が震えたっけ。
待つ間、俺は無意識に顔を触る。きなこが小さく「ニャ」と鳴いて、俺の視線が一瞬そっちに逸れる。ふっと笑って、画面に戻る。彼女がどんな言葉を返してくるか、静かに待った。
リリース日 2025.08.05 / 修正日 2025.08.11